2021年12月6日

毎日の晩酌が楽しみだった50代の男が、酒をやめる決意をしてどうなったか 〜禁酒・断酒・ソーバーキュリアス体験〜

50代半ばにして、30数年ずっと親しんできた酒との付き合いを断つことを決意した。

1. 断酒を決意するまで

毎日の晩酌が楽しみという方々はきっとこう思うはず。 
「酒をやめるなんてありえない」 
「何を楽しみに生きるんだ」 
「ずっと我慢して生きるのか」 
「やるとしてもせいぜい節酒だろう」 

実際私もそう思い込んでいた。 酒無しの人生なんてありえない。ビール、ワインを味わい、ウイスキーのストレートを舐めるのは至福の時間であり、晩酌のくつろぎや酒席での語らいこそ人生と思っていた。 

数年前、50歳を過ぎた頃から酒にめっぽう弱くなり、二日酔いとなると終日体が動かず何も食べれないくらいになった。酒量は抑えが効いたのでアルコール依存症というわけではない。ただ「ビール一本で終わり」というのができなくなっていた。 

そこに新型コロナによる在宅勤務で晩酌時間も増えた。毎朝起きると体が重く、胃腸がだるく、気分が落ち込むようになった。鏡を見ながら昨晩飲んだことを後悔し「今日は休肝日にするぞ」と誓うが、夕方には飲むという日々を繰り返していた。 

今から半年前、二日酔いで気分がどん底のある朝、強い気持ちが湧いた。「こんなんじゃまずい。本気で酒をやめてみたらどうだろう」。 

早速、禁酒のバイブルとされている有名本を読み、ネットで断酒情報をあさり、気持ちと理論の両面から酒を体に入れないことに決めた。 


2. 断酒してみるとこうなった

断酒するとすぐわかるがとにかく体が気持ちいい。酒のデメリットについての理論武装もしっかりしてある。またこれまでさんざん酒に振り回され続けたことがトラウマにもなっている。

そんなことから、断酒後二日目にして、酒に対する感情が180度変わったことに気づいた。ビールやウイスキーボトルを目の前にしても飲みたいという気持ちがわかない。アルコールを体に入れたくないとまで思う。自分の意識の変化に驚いた。 

朝の目覚めが爽快である。ベランダから景色を眺め朝日を浴びながら深呼吸をすると、かつて無かった自己肯定感、幸福感が沸き起こってくる。体も頭も軽く内臓もすっきり。味覚が敏感になり朝ご飯やコーヒーが美味しい。家族との会話も心地いい。 

夜も意識がはっきりしていて気分がいい。映画のストーリーが頭に入る。就寝前の読書が楽しい。翌朝後悔する不用意なネット書込やメッセージ送信も無い。記憶力も増した。 

見るもの触るもの全ての解像度が上がった。さらに出費まで減るのだ。
酒をやめることは、「一生我慢して過ごすこと」では決してなく、日常生活の一つ一つに「気持ちよさが舞い込むこと」であった。 


3. 酒について思うこと

ここ数年はすっかり酒に支配される生活で、やたらと酒のことばかり考えていた。 
夕方になると、「何を飲もうかな」「ああ気分がよくなってきたな」「早めに切り上げないと朝辛いぞ」「もうちょっとだけ飲もう」 
朝起きると、「少し量減らさないとなあ」「今日は休肝日にしよう」 
昼になると、「酒は夕方まで我慢しなきゃな」 
夕方になると、「何を飲もうかな…」 
という無限ループ。 

飲んでる間は最高に気分がいい反面、飲んでない時はテンションが下がる。毎日、金を払ってジェットコースターに乗って、疲れ切って降りて、また乗り場に並んでしまう感じだ。 

また酒が体全体にいかに大きな影響を与えていたか、酒をやめると痛感することになる。
脳(睡眠、判断、記憶、気分、欲求)や内臓(消化器、肝臓、腎臓)や味覚、血行、水分量等々。
断酒すると、頭も体も生まれ変わったように生き生きとしている。

断酒は無理なので「節酒」をしたいと思っている人も多いはずだ。だが、もし意識が酒に支配されているような状態だと、「節酒行為自体がストレス」になってしまう。いい気分と我慢と後悔の繰り返しだ。
一方、酒をやめてしまうと完全ストレスフリーだ。ついでに出費もフリー。タバコをやめたことがある人ならこの感覚はよくわかるに違いない。

最近は日本を含む世界的な傾向として飲まない若者が増えていて、あのフランスですら国内ワイン消費が減り輸出頼みになってるとか。「ソーバーキュリアス」という、飲めるけどあえて飲まないことを選択している人たちも増えている。中高年であれば、老後の健康や生活費を気にしている人には、断酒は格好のネタであろう。

50代半ばにして酒をやめてから半年近くが経った。成人後の人生の後半戦、このまま酒無しでまったりと過ごしてみようと思う。
(2021年12月)