2014年3月21日

松本清張の短編小説にはまった

松本清張の初期の短編小説にはまった。清張と言えば『点と線』『砂の器』など長編推理小説が有名だが、文学的な素晴らしさでは初期の短編こそ読まれるべきだと思う。

彼の短編小説では、平凡な庶民がふとしたきっかけで破滅していく話や、社会的に屈折した感情を持った人物がのし上がろうとすることで結果破滅していく話など、どちらかというと陰鬱な展開が多い。だが絶妙な文体に乗せられ一話ごとの人間ドラマにのめり込んでしまいラストの余韻も深い。1950年代という時代背景の古さは否めないが、漱石や芥川などと比べれば現代的でありかつ人間心理の普遍性も感じさせてくれる。さすが今の時代でも二時間ドラマ原作の常連を張っているだけのことはある。

以下の三冊がおすすめ。いずれも時代小説は除いてあり現代小説である。kindleで読めるのもうれしい。

表題作は芥川賞受賞作。『断碑』『笛壺』『赤いくじ』『青のある断層』『喪失』『弱味』など傑作揃い。


表題作に加え、『真贋の森』『紙の牙』『空白の意匠』がお気に入り。


推理小説集。表題作に加え、『地方紙を買う女』『一年半待て』『カルネアデスの舟板』などが秀逸。