2012年3月24日

日本マクドナルドの驚異のV字回復


先週のテレビ東京のカンブリア宮殿スペシャルは「日本マクドナルド」だったが、その改革の中身と驚異的な業績の回復を見て興奮してしまった。

今からわずか8年前、日本マクドナルドが創業以来の赤字転落で苦しむ中、米アップルコンピュータの副社長にまで上り詰めた原田永幸氏がトップに就任した。そこからの8年間は日本経済がデフレで苦しんだ時期にもかかわらず、年間客数が11億人から16億人に5億人増、店舗数をあえて減らしたにもかかわらず1,500億円の大幅売上増。絵に描いたようなV字回復を果たした驚異の経営者だ。

よく言われることだが、マクドナルドの主要なライバルは決してモスバーガーではなく、牛丼チェーンやコンビニである。その強力なライバルに圧倒的な差をつけたのが彼のすごさだ。彼は言う。「会社を成功させるための大事なカギになることは何か?それは業績である。業績がなければどんなに正しい戦略も改革も正しくない。」

原田氏が来る直前のマクドナルドは、65円の「激安マック」により業績とブランドイメージが低迷していた。原田氏はまず「味をよくする」を掲げ、「メイド・フォー・ユー」という注文に応じてその場で作る設備に100億円を投じた。味がよくなったことを広めるために100円マックキャンペーンを行い客足を一気に増加させ、その後8年間で6回の値上げを行った。最近のマクドナルドの店舗がすっかりおしゃれになって、高額になって、ブランドイメージも上がっていることは誰もが感じていることだろう。さらに24時間デリバリーと、この勢いはしばらく止まらないはずだ。

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私は普段、マクドナルドにはほとんど行かない人間だ(たまには行くけど)。ハンバーガーは典型的な高カロリーのアメリカ食文化であり、ヘルシーとして世界的にブームとなっている日本食とは全く相容れないものと偏見を持っている。ところがどうもあのジャンクな味は人間を惹きつけるらしく、「食の帝国主義」は着々と浸透しているように見える。一ヶ月間ハンバーガーを食べ続けたら人間はどうなるかを自身で実験したアメリカドキュメンタリー映画「スーパー・サイズ・ミー」によると、実際にドクターストップがかかるくらい体調に異変を起こす代物だ。アメリカ人の肥満度は貧困層を中心に目を覆うばかり。おもちゃをダシに子供の味覚をマック漬けにする戦略も、映画では手厳しく批判されている。

原田氏の経営者としての能力は特筆すべきものだが、だからこそ日本人の食文化を憂慮してしまう。世界中が日本食のすばらしさと日本人の肥満度の低さと長寿命に注目している中、原田氏の経営者としての能力が高いほど、日本人の高カロリー食が一層加速するのは実に皮肉なことだと思う。糖尿病、心臓疾患増加による近い将来の医療費増大は、放射能による健康被害なんかよりはずっと可能性が高い。

別にマクドナルドのせいでもないかもしれない。原田氏が言ってることだが、マクドナルドにヘルシーメニューを求める顧客の声は多いが、実際にはヒットしないらしい。逆にヒットするのは「メガマック」に代表される高カロリーメニューばかり。戦後からの日本の食文化の変質はもう手遅れのようだ。

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